国境
国境(こっきょう)とは、国家の領域の境目、境界のことである。
目次
1 概説
2 位置を規定する根拠
2.1 海上の国境
3 国境の透過性
3.1 国境を開放している地域
3.2 国境閉鎖
4 三国国境
5 その他
6 国境の例
6.1 河川
6.2 山岳
6.3 その他自然的国境
6.4 人為的国境
7 脚注
8 関連項目
概説
地球は絶対的空間の広がりとして連続しており、自然地理学的な障害を別にすれば、本来人間や物体の自由な移動を許容するものである。古来より、国家領域の周囲はフロンティアとして曖昧にされていたが、1648年のヴェストファーレン条約以降、主権国家は明確な領域を持つこととされ、地球の連続的な広がりを有界化して、バウンダリーとしての国境線が地表上にひかれることとなった。
位置を規定する根拠
国境は、陸上にある場合もあれば海上、湖上にある場合もある。国境は大きく自然的国境と人為的国境に二分される。
- 自然的国境
- 自然的国境は山脈、河川、湖水、海洋などの自然物によって定めたもの。
- 例:中国と朝鮮民主主義人民共和国(鴨緑江・豆満江を国境としている)
- 川を国境とする場合、国際河川上においては、川床の最深部をつないだ線(航路の中央線ともなる)が国境となる。
- 人為的国境
条約、経線、緯線、道路、民族などの人為によって定めたもの。- 例:アメリカ合衆国(ミネソタ州以西)とカナダ(マニトバ州以西)(北緯49度の緯線を国境としている)
いずれもこれを境として、国の領土または領海を分ける。
海上の国境
海上においては、海に面した領土を持つ国家の領海の縁辺が国境となる。海を隔てながらも領海が接している国家の場合、両者はその境界ラインで国境を接することになる。ただし、国際法上、領海の範囲は領土の基線から最大12海里(約22.2km)までという範囲に限られるため、幅44.4km以上の海によって隔てられる国家同士は、国境と国境の間に公海を挟むことになる[要出典]。
ただし、領海の外側には接続水域と排他的経済水域が存在しており、特に後者は通例として200海里(約370km)という広大な範囲を占めるため、複数の国家の排他的経済水域が直接に接することは多く見られ、この接触ラインが国同士の経済的権益の境界線となる。
また、大洋に散在する島々からなる島嶼国家同士の場合、世界地図では両国の領土の中間ラインに境界線を描いている。
国境の透過性
陸上の国境には、標柱、遮断機、壁などが設置され、柵などの障害物によって往来を困難にし、往来を特定の国境検問所のみに制限することが多い。また国際空港や陸上の国境検問所では、出入国管理(パスポート・コントロール、イミグレーション・コントロール)を行ない、多国間との財物や人の透過性を制御する。国境にどの程度の透過性を与えるかは、それぞれの国の主権者が決定する事項であり、国家がグローバルな競争の領域単位である状況の下では、労働力や財の市場を最適化するように透過性が操作される。査証や在留資格の許可数や、非合法で入国した労働者取締の強度がこの透過性操作に当たる。
国境の物理的な強度は、この社会的透過性の程度によって規定される。透過性が低い国境は、壁や地雷原などにより、二重三重に封鎖され、人の往来が許されないだけでなく、人の自由や権利にとっても国境であるといわれることもある。ドイツが東西に分割されていた当時の境界などがその例である。
国境を開放している地域
ヨーロッパ統合の成果としてシェンゲン協定実施国[1]では、このような国境での出入国管理は廃止されている。この結果、シェンゲン協定実施国内においては通貨統合の成果と相まって、国境の意味が薄れているため、少数民族問題が解消されつつある。例えばイタリア領南チロル地方に住むドイツ系住民においては、独立を求めない現状維持派が多数を占めるようになっている。これはイタリア領からオーストリア領、ドイツ領へ往来が自由であり、通貨統合により経済的障壁も解消されているからである。
バチカン、サンマリノはそれぞれイタリアとの国境を開放している。
イギリスとアイルランドは国境を開放している。(en:Common Travel Area)
ベラルーシとロシアは国境を開放している。(ベラルーシ・ロシア連合国家を参照)
インドとネパールも国境を開放している。
オーストラリア、ニュージーランド、クック諸島、ニウエ間も国境を開放している。- スペインのOs de Civísは、スペインと地続きでありながら車が通行できないため、アンドラを経由しないとたどり着けない[2]。そのため、Os de Civísではアンドラとの国境を開放しているようである。
国境閉鎖
二国間の主義主張の違い及びそれに伴う紛争、戦争、経済格差などを理由にして国境を封鎖し、物資や人的往来を禁止、大きく制限している地域も存在する。代表例では、旧東西ドイツ国境(ベルリン封鎖、ベルリンの壁)など)。珍しい例では、リベリアが2014年の西アフリカエボラ出血熱流行に伴い、自ら国境を封鎖した事例がある[3]。
三国国境
三国国境(tripoint)は3ヵ国の国境が一点で交わる場所である。
その他
アンドラはシェンゲン協定に加盟していないため、ヨーロッパのミニ国家の中で唯一、道路上で出入国管理が行われている。
リトアニアやポーランドと、ロシア領カリーニングラードやベラルーシとの国境には、道路上に国境検問所が設けられている。しかし、それ以外の場所の国境は、低いフェンスや単管バリケードなど、簡易的なものになっている場合もある。
オーストリアのクラインヴァルザータール、ユングホルツ、ヒンターリス、エングなどはオーストリアと地続きだが、山に囲まれておりオーストリア国内から直接アクセスできず、ドイツからしかアクセスできない。
国境の例
河川
鴨緑江 - 中国/ 北朝鮮
リオ・グランデ川 - メキシコ/ アメリカ合衆国
フライ川 - インドネシア/ パプアニューギニア
ラプラタ川 - アルゼンチン/ ウルグアイ
ウルグアイ川 ‐ ウルグアイ/ アルゼンチン/ ブラジル
パラナ川 ‐ パラグアイ/ アルゼンチン/ ブラジル
オリノコ川 ‐ コロンビア/ ベネズエラ
アマゾン川 ‐ ブラジル/ ペルー/ コロンビア
プトゥマヨ川 ‐ エクアドル/ コロンビア/ ペルー
グアポレ川 ‐ ボリビア/ ブラジル
ヨルダン川 - ヨルダン/ パレスチナ
ユーフラテス川 - イラン/ イラク
アムダリヤ川 - アフガニスタン/ タジキスタン、 アフガニスタン/ ウズベキスタン
セントローレンス川 - カナダ/ アメリカ合衆国
山岳
白頭山 - 中国/ 北朝鮮
ピレネー山脈 - フランス/ スペイン
スカンディナヴィア山脈 - ノルウェー/ スウェーデン
モンブラン - フランス/ イタリア
プチ・サン・ベルナール峠 - フランス/ イタリア
グラン・サン・ベルナール峠 - スイス/ イタリア
ブレンナー峠 - オーストリア/ イタリア
アンデス山脈 ‐ チリ/ アルゼンチン
カラコルム山脈、ミンタカ峠 - パキスタン/ 中国
カイバル峠 - パキスタン/ アフガニスタン
その他自然的国境
人為的国境
北緯49度線 - アメリカ合衆国/ カナダ
北緯26度線 - 西サハラ/ モーリタニア
北緯25度線 - マリ/ モーリタニア
北緯22度線 - エジプト/ スーダン
南緯13度線 - アンゴラ/ ザンビア
東経141度線 - インドネシア/ パプアニューギニア
東経56度線 - カザフスタン/ ウズベキスタン
東経25度線 - リビア/ エジプト
東経25度線 - リビア/ スーダン
東経24度線 - リビア/ スーダン
東経24度線 - チャド/ スーダン
東経22度線 - アンゴラ/ ザンビア
東経21度線 - ナミビア/ ボツワナ
東経20度線 - ナミビア/ ボツワナ
東経20度線 - ナミビア/ 南アフリカ共和国
西経12度線 - 西サハラ/ モーリタニア
西経141度線 - アメリカ合衆国/ カナダ
脚注
^ EU域内とは必ずしも同一ではない。例、英国はEU加盟国であるがシェンゲン協定非実施であり、ノルウェーはEU非加盟であるがシェンゲン協定実施国である。
^ Os de Civís is very close to the Spain–Andorra border, and is unique in being the only Spanish village that can be reached by vehicle only by going through Andorra.
^ “エボラ出血熱が広がる西アフリカ、リベリアが国境を封鎖”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年7月29日). http://www.afpbb.com/articles/-/3021703?ctm_campaign=nowon 2014年7月31日閲覧。
関連項目
領土・領空・領海
- 国境検問所
- 国境警備隊
- 沿岸警備隊
- アメリカ=メキシコ国境
- ベルリンの壁
- メキシコとアメリカの壁
- 国際空港
- 軍事境界線
国境紛争・領土問題
- 国境取締法
- 県境
- 公海
- 飛地
- 島国
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