ナイアーラトテップ






H・Pラヴクラフトの作品『魔女の家の夢』で「黒い男」として現れたナイアーラトテップ。


ナイアーラトテップ (Nyarlathotep) は、クトゥルフ神話などに登場する架空の神。日本語では他にナイアーラソテップナイアルラトホテップニャルラトホテプニャルラトテップなどとも表記される。


この名前は架空のものだが、エジプト語の接尾語「 -ホテップ(-hotep)」は「平和」或いは「満足」を意味する。




目次






  • 1 概要


  • 2 神性


  • 3 化身


  • 4 土地


  • 5 別名一覧


  • 6 発想


  • 7 ナイアーラトテップが主題の作品


    • 7.1 クトゥルフ神話作品


    • 7.2 その他の作品




  • 8 関連事項


  • 9 脚注・出典


  • 10 外部リンク





概要


初出はハワード・フィリップス・ラヴクラフトの短編小説『ナイアルラトホテップ(1920年)』。この小説でナイアーラトテップは古代エジプトのファラオのような「背の高い浅黒い男」と表現されている[1]。「クトゥルフ神話」体系におけるナイアーラトテップは旧支配者の一柱にして、アザトースを筆頭とする外なる神に使役されるメッセンジャーでありながら、自身の主で旧支配者中、最強のアザトースと同等の力を有する土の精であり、人間はもとより他の旧支配者達をもさげすんでいる。


顔がない故に千もの異なる顕現を持ち、特定の眷属を持たず、狂気と混乱をもたらすために自ら暗躍する。彼が与える様々な魔術や秘法、機械などを受け取った人間は大概自滅している。天敵であり唯一恐れるものは火の精と位置づけられる旧支配者クトゥグアのみ。また旧神ノーデンスとも対立している。


旧支配者の中で唯一幽閉を免れ、他の旧支配者と違い自ら人間と接触するなど、クトゥルフ神話において特異な地位を占める神性(神格)であり、クトゥルフ神話におけるトリックスターとも言える。アザトースの息子と言われ、妻は、大鹿の女神イホウンデー、従姉妹に[2]影の女悪魔と呼ばれる女神マイノグーラがいる。また配下にシャンタク鳥と忌まわしき狩人が存在する[3]。さらにドリームランドで地球の下級の神々を保護する一団「異形の神」の一柱として活躍する[4]



神性




ナイアーラトテップ


設定の流用が比較的自由となっているクトゥルフ神話でもナイアーラトテップの誕生は、ダーレスとラヴクラフトでかなりの違いがある。


ラヴクラフトがその作品や作家仲間への手紙の中で書いた内容は、以下の通りである。


この宇宙の中心、正常な物理法則が通用しない混沌とした世界には、絶対的な力をもった存在アザトース(Azatoth)が存在し、その従者の吹き鳴らすフルートに合わせて絶えず不定形な巨体を蠢かしているとされる。アザトースはとてつもなく巨大で絶対の力をもった存在だが、盲目で白痴なので、自らの分身として三つのものを生んだ。闇からシュブ=ニグラス、無名の霧からヨグ=ソトースそして使者たる這いよる混沌ナイアーラトテップである。ナイアーラトテップは、自らの主人であり創造主であるアザトースら異形の神々に仕え、知性をもたない主人の代行者としてその意思を具現化するべくあらゆる時空に出没する。

ラヴクラフトの短編『未知なるカダスを夢に求めて』では、簡単にひねり潰せるはずのランドルフ・カーターを騙して自滅に追いやろうとするなどラヴクラフト神話では、トリックスター的な役割を当初から担わされており、このあたりはその後のクトゥルフ神話と変わらない。また『未知なるカダスを夢に求めて』においてカーターに逃げられ、カダスに戻って神々を罵っていた。



化身


無貌なるがゆえにナイアーラトテップは様々な化身をとる。人の姿をとるときには、長身痩躯で漆黒の肌をした人物、エジプトから来た高貴なファラオのごとき預言者、核兵器の研究を推進する物理学者、星の知恵派教団の神父(ナイ神父)、魔女を操る暗黒の男などの姿で現れ、人の世に混乱と死をもたらす前触れとなる。サバトにしばしば現われる「黒い男」もまたナイアーラトテップの化身であるとされ、古代エジプトにおいて「暗黒のファラオ」と呼ばれた王、ネフレン=カはナイアーラトテップに捧げるあまりにも忌まわしい祭祀を行ったため、その名を歴史から抹殺された。一方で這い寄る混沌と呼ばれる姿は触腕、鉤爪、手が自在に伸縮する無定形の肉の塊と咆哮する顔のない円錐形の頭部によって特徴付けられる。輝くトラペゾヘドロンから顕現した際には、黒い翼と三つに分かれた燃え上がる目が闇に浮かびあがったという。


千の異なる顕現(化身)は同時に地球上に存在可能である。中には普通に人間として暮らしている者も少なくなく、そうした顕現の一人が何者かに殺され、その謎を追う別な顕現の一人称で展開する暗黒小説風の短編もある[5]



土地


ンガイの森(Wood of N'gai)

  • 登場作品:オーガスト・ダーレス「闇に棲みつくもの」(The Dweller in the Darkness)



ウィスコンシン州の北部中央のリック湖周辺の深い森。ナイアーラトテップが七太陽の世界から地球に降り立つ際の住処で、森の中央部には顔の無い無定形の生物(夜に吠ゆるもの)の似姿が刻み込まれた古い平石がある。


1940年にクトゥグアの部下である炎の精によって焼き払われた。



別名一覧



  • 「這い寄る混沌 (The Crawling Chaos)」

  • 「無貌の神 (The Faceless God)」

  • 「暗黒神(The Dark Demon)」

  • 「闇に棲むもの (Dweller in Darkness)」

  • 「燃える三眼」

  • 「顔のない黒いスフィンクス」

  • 「ブラックファラオ(The Black Pharaoh)」

  • 「大いなる使者」

  • 「強壮なる使者」

  • 「百万の愛でられしものの父」

  • 「夜(月)に吠ゆるもの (Howler in the Dark)」

  • 「盲目にして無貌のもの」

  • 「魔物の使者」

  • 「暗きもの (Dark One)」

  • 「ユゴスに奇異なるよろこびをもたらすもの」

  • 「古ぶるしきもの」

  • 「膨れ女 (Bloated Woman)」

  • 「血塗れの舌の神(The God of the Bloody Tongue, or the Bloody Tongue)」


など



発想


1921年、ラヴクラフトはラインハルト・クライナーに送った手紙の中で、自分が見た夢を、「私が10歳の時に体験した最も現実的で恐ろしい[悪夢]」と関連付けた。この経験は、散文詩『ナイアルラトホテップ』の題材となった。夢の中で、ラヴクラフトは友人サミュエル・ラヴマン(英語版)から次のような手紙を受け取った。


プロヴィデンスに来るならば、ナイアーラトテップを見逃してはならない。それは―想像を超えて―恐ろしいが、素晴らしい。それを見てからというもの、数時間後たっても忘れられない。未だに身震いする。


ラヴクラフトのコメントは次のようなものだった。


私はナイアーラトテップという名前を聞いたこともないはずだが、それについて理解できたように思えた。ナイアーラトテップは、世界中を飛び回る興行師または講師で、公会堂で開かれた展覧会で、恐怖と議論を喚起させていた。この展覧会は2つの出展物から成っていた。最初は恐ろしい、―ひょっとすると予言的な―映画のリールだった。もう一つは、科学的で電気的な装置を使った、いくつかの驚くべき実験を行っていた。私は手紙を受け取った時、ナイアーラトテップがちょうどプロヴィデンスにいたことを思い出した。私は人からあまりにも恐ろしいのでその展覧会を見に行ってはならないと警告されたことも覚えていた。しかし、ラヴマンの手紙が私を決断させた。私は家を出て、夜中に全員が恐怖に呻き、一方向に向かって歩いていく群衆を見た。私は彼らに加わって、偉大で、曖昧模糊とした、形容できないナイアーラトテップを一目見ることを恐れながら熱望していた[6]


ウィル・マリー(英語版)は、この夢のナイアーラトテップの像は、発明家のニコラ・テスラから発想を得ている可能性があると推測している。その講演には、電気装置を用いた印象的な実験が含まれており、一部の者にとって不吉なもののように見えていた[7]


ロバート・M・プライスは、ナイアーラトテップ(Nyarlathotep)という名前は、ラヴクラフトが愛好した作家であるロード・ダンセイニの作品の二つの名前から影響を受けている可能性があると指摘している。ダンセイニの『ペガーナの神々』には、偽預言者であるアルヒレス=ホテップ(Alhireth-Hotep)が登場し、『探索の悲哀』には、「怒れる」神マイナルティテップ(Mynarthitep)が登場する[8]



ナイアーラトテップが主題の作品



















クトゥルフ神話作品



  • ナイアルラトホテップ(ハワード・フィリップス・ラヴクラフト)

  • 壁のなかの鼠(ラヴクラフト)

  • 闇をさまようもの(ラヴクラフト)

  • 尖塔の影(ロバート・ブロック)

  • アーカム計画(ブロック)


  • 魔女の家の夢(ラヴクラフト)

  • 無貌の神(ブロック)

  • 暗黒のファラオの神殿(ブロック)

  • 闇に棲みつくもの(オーガスト・ダーレス)

  • 蠢く密林(デヴィッド・ドレイク)

  • 未知なるカダスを夢に求めて(ラヴクラフト)



その他の作品




  • ペルソナ2(ニャルラトホテプ、這い寄る混沌、月に吼えるもの) - 普遍的無意識の破壊性を司る存在として登場する。


  • 魔界水滸伝(ナイアルラトホテップ)


  • ワイルドアームズシリーズ(這い寄る混沌) - 種族名であり、「混沌の勢力」と呼ばれる侵略宇宙人の名前。外見はフラットウッズ・モンスターそのものである。


  • 斬魔大聖デモンベイン(ナイア)


  • 朝の来ない夜に抱かれて -ETERNAL NIGHT-(無貌の神)


  • 新本格魔法少女りすかシリーズ(ニャルラトテップ)


  • 這いよれ! ニャル子さん(ニャルラトホテプ) - 個体名ではなく異星人の種族名であるとされている。


  • 鋼炎のソレイユ -ChaosRegion-(無貌なる神)


  • 紫影のソナーニル -What a beautiful memories-(チクタクマン)


  • 漆黒のシャルノス -What a beautiful tomorrow-(The M)

  • 終末少女幻想アリスマチック


  • しゅぷれ〜むキャンディ(ニャルラトテップ)

  • アリシア・Y

  • 邪神伝説シリーズ

  • 秘神黙示ネクロノーム


  • Phantasmal Island (Nyarlathotep)


  • PHANTOM BULLET(ナイアルラトホテップ)


  • 殊能将之『黒い仏』


  • 素晴らしき日々~不連続存在~(ないあらとほてっぷ、這い寄る混沌)

  • 伴天連XX

  • アスタロト外伝、クレプスキュール三部作(魔夜峰央 - 前者では魔界の帝王サタンに封印され、物語の終盤に復活する古代妖魔として、後者ではただ一柱のみ天帝による封印から逃れたクトゥルーの邪神であり、主人公の遠い先祖として登場する)


  • サウスパーク - となりのトトロのパロディと共に登場。


  • 魔法少女プリティ☆ベル - 顔があるのに顔が無い、顔は見えているのに顔がわからない、「無貌」の存在。「這いよる混沌」と同じ名で呼ばれる。


  • 神羅万象チョコ ゼクスファクター(ナイアーラ・ホテップ、偽神ナイアーラ)


  • 邪聖剣ネクロマンサー(ナイアラトテップ)


  • 英雄*戦姫(ナイアラルトホテップ)


  • スーパーロボット大戦UX(ナイア) - 先述の「斬魔大聖デモンベイン」のアニメ版「機神咆吼デモンベイン」に準じた役目。


  • 小林泰三『玩具修理者』

  • ぱら☆いぞ


  • LORD of VERMILION III(ニャルラトホテプ)


  • 噂屋(はいよる混沌)


  • Fate/Grand Order - ナイアーラトテップは、夏のイベントにおいてムーンキャンサークラスのサーヴァントであるBBに力を貸している。


  • クラッシュフィーバー - 貌無き奈烙の瞳 ニャルラトテップ



関連事項



  • 輝くトラペゾヘドロン (Shining Trapezohedron)


脚注・出典


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  1. ^ HP Lovecraft, "Nyarlathotep", The Doom that Came to Sarnath, New York: Ballantine Books, 1971, 57–60. Archived July 16, 2015, at the Wayback Machine.


  2. ^ E・P・バーグランド『Wings in The Night』(「SHARDS OF DARKNESS」(ISBN 0965943364)所収。


  3. ^ ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの『未知なるカダスを夢に求めて』


  4. ^ 「エンサイクロペディア・クトゥルフ」の異形の神の項より


  5. ^ 「Noir-Lathotep」LINDA・L・DONAHUE=「CTHULHU UNBOUND」(Permited Press)ISBN 1934861138


  6. ^ H. P. Lovecraft, letter to Reinhardt Kleiner, December 21, 1921; cited in Lin Carter, Lovecraft: A Look Behind the Cthulhu Mythos, pp. 18–19.


  7. ^ Will Murray, "Behind the Mask of Nyarlathotep", Lovecraft Studies No. 25 (Fall 1991); cited in Robert M. Price, The Nyarlathotep Cycle, p. 9.


  8. ^ Price, pp. vii, 1–5.



外部リンク



  • 『ニャルラトホテプ』:新字新仮名 - 青空文庫(H・P・ラヴクラフト著、大久保ゆう訳)




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