キーボード (コンピュータ)











米国で主流の101拡張キーボード (IBM Model M)




オリジナルのIBM PCのキーボード


キーボード(英: Keyboard)は、コンピュータへの入力機器の一つであり、手指でキーを押すことでコンピュータへ文字信号などを送信するもの。鍵盤(けんばん)と呼ばれることもある。様々なソフトウェア上で文字入力を基本とした機器であるが、コンピュータ (OS) の操作全般にも用いられる。




目次






  • 1 概要


  • 2 キーボードの種類


    • 2.1 配列による分類


    • 2.2 テンキーの有無


    • 2.3 様々なキーボード


    • 2.4 大きさ


    • 2.5 アイソレーション・キーボード




  • 3 キーボードの機能


    • 3.1 オートリピート


    • 3.2 シフトロック


    • 3.3 Caps Lock


    • 3.4 Num Lock


    • 3.5 Scr Lock


    • 3.6 PrtSc


    • 3.7 SysRq


    • 3.8 ベル音/ビープ音


    • 3.9 クリック音


    • 3.10 同時押し・ロールオーバー


      • 3.10.1 主なNキーロールオーバー対応キーボード




    • 3.11 表示機能


    • 3.12 キー配列


    • 3.13 その他




  • 4 キーボードの機構


    • 4.1 キースイッチユニット


    • 4.2 アクチュエータ


    • 4.3 スタビライザー


    • 4.4 キートップ


      • 4.4.1 ホームポジション・マーカ




    • 4.5 ステップスカルプチャ


    • 4.6 チルトスタンド




  • 5 企業によるキーボードの名称


  • 6 メンテナンス


  • 7 キーボード入力のミスに関わるジョーク等


  • 8 脚注


  • 9 関連項目


  • 10 外部リンク





概要


日本語における 鍵盤はkey boardからの訳語であり両者は本来的に同一のものである。欧米においては鍵盤楽器のカラクリを応用した機械式タイプライターを経て、タイプライターのインタフェースを模した電子的入力機器へと連続的に発展していった歴史的経緯により一連の概念として理解されるが、タイプライターの普及が限定的に留まった日本の社会通念においては、楽器の鍵盤と入力機器のキーボードとは断絶しており個別に扱われることが多く、電子楽器のキーボードでわずかに関連性が示される程度である。


一般的なキーボードの形状は、長方形の板状の筐体におよそ百前後のキー(鍵)が設置され、キートップには文字、記号、機能等が印字されている。キートップを押したり離したりする事によってスキャンコードがコンピュータへと送信され、これによりコンピュータの操作を行う。材質、配列、形状、インターフェイス、また用途や品質により様々な種類が存在する。


元来は、電動タイプライターの操作部をそのまま借りてきたものであり、最初期のコンピュータで用いられたパンチカードやロジック配線パネルに代わるものである。その後、端末動作用のコントロールキー、ファンクションキー、Altキー(オルタネートキー)などが加えられて、現在の形になっている。これらは内部に電気的スイッチをもち、場合によってはそれをキーボードの内部的に処理して、各々のキーに設けられた単純なスイッチの開閉という信号から、より少ないケーブルで入力情報を伝えるための電気信号に変換する集積回路を持っている。


また、少数ではあるが、筐体内部にCPU、メモリ、ストレージを実装し、キーボード自体がPCとなっている製品もある。また、ノート型、ラップトップ型と呼ばれるものはキーボードが本体と一体になっている。


キーボードはタッチ(入力)時の感触や音など、使用者個々の官能的嗜好に左右される部分が大きいため、(より廉価なマウスほどではないが)キースイッチの構造や外形デザイン等さまざまな差別化がなされた製品が各社からリリースされている。キーボードは大部分のPCに標準装備の基本構成機器の一つである上、使用利便性を考慮するとかなりの実装面積を必要とする、目立つ部分でもある。かつてのキーボードは灰色や白色のスイッチが並ぶ、どのメーカーでも似たような形状の素気ないものだったが、市場競争の激化と共に、システムフルセットで供給されるメーカー製PCではアップル製品を筆頭にモニタや本体等とトータルコーディネートして意匠を凝らされるようになっている。キーボード単体でも形状や電飾でデザイン性を高める付加価値をつけた製品も多い。


PC市場のメインストリームが、キーボードの取替が可能なデスクトップ型から、本体にキーボードが固定装備されたノート型に移行すると、周辺機器としてのキーボード市場は縮小した。並行して、キースイッチの形状も背が高い壇状であったものが、ノートPCと同様のパンタグラフ式スイッチなど操作感覚が近いフラットなデザインのものが多くなった。またデスクトップパソコンにブラウン管モニタの組み合わせが主流だった90年代までは、キーボードを含むパソコンは白系のカラーが主だったが、2000年代以後ノートPC及び液晶ディスプレイが主流となってからは黒色系が主流になった。




携帯端末用無線キーボード


しかしその後、ノート型PCのシェアがタブレット型端末やスマートフォンに蚕食されるとともに、小型化を優先してキーボードを廃したこれらの端末では文字入力を多く行うユーザーには支障が出るため、別途キーボードを購入する需要が生じ、タブレットやスマートフォンのクレードルとなりノートPC同様のレイアウトで使用できるもの、Bluetoothで無線アクセスにより携帯端末を傍に置くだけで使用可能となるもの、携帯に便利な折りたたみキーボードなどが売れ筋となっている。



キーボードの種類



配列による分類



コンピュータ用キーボードは様々な種類があり、キー配列一つ取っても多くの種類に分類できる。日本では日本語入力のために全角/半角キー、変換キー、無変換キー、カタカナ/ひらがなキーなどの漢字変換用キーが追加されたJISキーボードが主に使われているが、親指シフトキーボードを初めとする、特に日本語入力のための配列を工夫したキーボードもある。


なお、使用字種の少ない米国の英語入力のためには、欧州より文字キーの少ない米国配列のキーボードが使われている。米国配列のキーボードでは、アットマーク、コロン、引用符等、記号の配列がJISキーボードとは一部異なる。ちなみに米国配列の英語キーボードでも日本語の入力は十分可能である。文字キーの個数がJISキーボードより少ないため、仮名の配列も一部異なる。一部では、日本語ユーザでもあえて米国配列のキーボードを使用する者も存在する。最初に触れた米国配列のキーボードでタッチタイピングを覚えたり、キーの少ないシンプルさが好まれたりする事等がその理由である。



テンキーの有無




テンキーレスのキーボードのひとつ Realforce91UBK


JISキーボードでも、テンキーが右側に別にある物をスタンダードキーボード、テンキーがアルファベットの文字列中にある物(テンキー部のない物)をデータエントリーキーボードと呼ぶ事もある。また、前者をフルキーボード、後者をテンキーレスキーボード、等と呼ぶ事もある。


前者は、主にデスクトップ型パソコンやコンピュータ端末などで使用され、後者はノートパソコンや省スペースを目的とする一部のデスクトップパソコン、データ入力を専門とするパソコン、コンピュータ端末などで使用される事が多いが、テンキー部の有無で用途が区別される事はあまりない。


テンキー部の省略されたテンキーレスキーボードは、通常のフルキーボードに比べ種類が少ないが、その中でもフルキーボードから純粋にテンキー部を取り除いた物[1]と、少しでも全体をコンパクトにまとめるために独自の配列を採用した物[2]の2種類に大別される。どちらにせよ、テンキーの存在はポインティングデバイスの設置位置を遠くするため、テンキーの無いキーボードは一部のユーザに重用されているが、個人用途では2007年1月現在でも未だニッチの域を出ていない。PCサーバを19インチラックに搭載する場合、設置スペースの関係からテンキーレスキーボードを用意することが多い。





Apple IIeのメーカー純正テンキー


それとは逆に、ノートPCで数値入力を頻繁に行う場合の作業効率を上げるため、テンキーのみの外付けキーボードも存在する。かつてはPC-98シリーズや富士通などメーカー独自規格ごとの純正品あるいはサードパーティ品がカタログに並んでいた。現在でもUSB接続の汎用品として販売されている。少数だがマウスやトラックボールとテンキーボードを一体化した製品も存在する。



様々なキーボード




エルゴノミクスキーボード


また、KinesisのContoured Keyboardに代表される、人間工学に基づいてタイプする人の負担を減らすことを重点に置いた、いわゆるエルゴノミクスキーボードや、Frog PadやCut Keyのように片手での入力を行うことを前提としたキーボードもある。


ゲーム用のコントローラ(ゲームパッド)の中には、ゲーム用デバイスであるにもかかわらずゲームコントローラの信号ではなく、キーボードと同じキーコード信号を出し、OS側からは一般のキーボードとして認識される物もある。これらは特別なドライバをインストールする必要が無く、またゲーム用の接続ポートが占有されないなどの利点があり、ネットゲームのヘビーユーザー向けとして少数ながら販売されている。中にはマイクロソフトの「Strategic Commander」のような特殊な形状をしたものもあった。


最近ではマウスにハードウェアマクロを搭載するため、マウスをUSB接続にし、内部的にキーボード信号を出して「マウス+キーボード」の複合デバイスとして認識させる場合もある。この場合いったんマウスに設定を登録しておけば、他のPCでドライバレスで同じ動作を可能にできる。


また身体障害者向けに一部キー機能を抜き出した入力機器も見られる。特に、ソフトウェアキーボード(スクリーンキーボード)は、キーボードの機能をソフトウェアで実現したもので、画面上にキーボードの形を表示し、ポインティングデバイス操作によるカーソルや、タッチスクリーンとペンなどで各キーを指定して文字入力を行う。音声出力や検索機能を搭載できるカスタマイズ性が、特徴の1つで、初心者や障害者支援の一環にもなっている。


この他、ブックを搭載し、ページをめくる事でキーボードキーの意味がプログラムにより変わるインテリジェントキーボード(鉄道駅などのみどりの窓口の発券端末など)、特殊なペンによりキー入力を行うペンタッチキーボード(PDAなどで使用)などがある。


他にもショートカットコマンドの入力用としてお気に入りキーボードのような製品も存在する。



大きさ


キーの横方向の間隔をキーピッチといい、フルサイズのキーボードで19mmである。かつては17mm程度などのよりキーピッチの小さいキーボードを搭載したモバイルノートパソコンも多かったが、近年は、モバイルノートパソコンもB5サイズ以上の物は19mmの物が多い。モバイル向けの外付けキーボードだと15mm - 17mm程度の物が多いが、15mm以下のより小型の物ものある。ソフトウェアキーボードの場合、タブレットで例えばiPadの場合、縦向きに使用した場合13mm、横向きに使用した場合17mmである。



アイソレーション・キーボード


近年キー間に間隔をあけ各キーの面積を小さくし独立した配置にしたアイソレーション・キーボードが多く使われるようになった。ソフトウェアキーボードでは、例えばタブレットのiPadの場合、縦向きの場合2mm、横向きの場合は3mm、キーとキーの間に余白をつけている。Windows 8ではタッチ対象は2mm以上の余白をつけることを推奨している[3]。隣接するキーを同時に押してしまうミスの低減、キーの間の清掃が容易といったメリットがある。



キーボードの機能


今日、一般に普及しているキーボードは、昔のタイプライターの時代から継承してきたものや、コンピュータの時代になってから新たに追加されたものなど、数多くの機能を備えるようになっている。



オートリピート




開始や間隔の設定


キーを押しっぱなしにした場合、そのキーに対応するコードが連続して入力(送信)される機能である[4]。最初に押した時点からn秒後、m秒間隔で繰り返しするというような設定を行なえるキーボードもある。ソフトウェア的にシミュレートしたり、ソフトウェア側から(キーボード単独でなく)設定できるものもある。ほとんどのOSでは、これらの間隔を自由に設定できる。例えば、Windowsにおいては、コントロールパネルでリピート間隔(速度)を設定できる。



シフトロック


ロックされている間は、キーボード上の全てのキーがシフトキーを押したままの状態になる特殊なキーである[5]。この機能の起源は機械式のタイプライタであり、シフトロックキーが有効になっている間は文字通り物理的にシフトキーがロックされた状態となるものであった。通常コンピュータ用のQWERTY配列キーボードでは用意されている事は少ないが、フランス語圏で多用されるAZERTY配列等やコモドール64などを含む比較的古いもの等にはシフトロックキーが搭載されている。


QWERTY配列のキーボードにはシフトロックキーの代わりにキャップスロックキーが用意されている。キャップスロックでは一部の文字の入力はシフトキーと文字キーを同時に押す必要があるが、何らかの理由で同時に押すことができない状況に対応するため、例えばMacOS/OSXやWindows等を含む一部のOSやウィンドウマネージャの一部にはキャプスロックキーにシフトロックキーを割り当てる事ができる機能がある。



Caps Lock


Caps Lock(キャップスロック)キー、キャピタルロックキーは、キーが有効になっている間、コンピュータに入力される文字を小文字から大文字に変える為のキーである[5]。記号等の非英字のキーは上段シフトとして扱われない点がシフトロックとは異なる。CapsとはCapital lettersの略、すなわち英字の大文字の意味である。



Num Lock


詳細はNumLockキーを参照。



Scr Lock


詳細はスクロールロックを参照。



PrtSc


詳細はプリントスクリーンを参照。



SysRq


SysRq(システムリクエスト)キーは、本来は操作中にシステムに対するコマンド入力モードに切り替えるためのキーである。メインフレーム環境のIBM 3270端末などでは、z/OSなどのTSO使用時にはVTAMコマンドが入力可能になり、z/VMなどのCMS使用時にはCPコマンドが入力可能になる。SysRqキーはパーソナルコンピュータでは101キーボードから搭載され、メインフレーム接続用の端末エミュレータで使用されるが、パーソナルコンピュータでは伝統的にコマンド入力モードへの切替にはEscキーを使用するアプリケーションが多い事もあり、SysRqキーは一部のディスプレイ切替装置用ソフトウェアや、LinuxカーネルでのマジックSysRqキーなどを除き、使用頻度が低い。



ベル音/ビープ音


機械式キーボードにおいては、右端まで来ると、その旨を通知するためのベルが鳴る。コンピュータ用のキーボードは、一部の機種(Sunのキーボードなど)において、キーボード内にベル音を鳴らすためのスピーカーがついている場合がある。この場合、本体側からBelキャラクタ(ASCIIで07H)を送信することで音が鳴る。但し、本物のベルではないのでビープ音という場合がほとんどである。



クリック音


機械式キーボードにおいては、キーを打鍵するたびに機械的な動作に応じて音と手応えがするが、電気式のコンピュータ用のキーボードではほとんど音がしない。そのため、キーの打鍵がされたかどうかを確認するために、打鍵するたびごとに音を発生させる仕組みが用意されている場合がある。これをクリック音という。音の発生機能そのものは前述のベル音と同じである。


しかし一部の業務用やマニア向け仕様のキーボードの中には、スイッチ部分に物理的にクリック感を生み出す物も見られ、好みで選択されている。中にはこれに特化して、激しい動作音のするものも見られる(後述)。



同時押し・ロールオーバー


電気式のキーボードは、機械式キーボードとは違い、同時に複数のキーを押すことが物理的に可能であるが、内部の電気回路的な制約により、押下したキー全ては入力できないことがある[6]。この際、何文字まで同時にキー入力を受け付けるかを表すのがロールオーバーである。たとえば3キーロールオーバーとは3キーまで同時に押しても入力可能ということを指し、Nキーロールオーバーとはどのキーを同時に押しても全て入力されることを指す。現在のキーボードはコントローラーによっていくつかの種類があり、安価なキーボードの場合には2 - 3キーロールオーバー、高価なキーボードの場合には疑似Nキーロールオーバーや完全Nキーロールオーバーとなっている。富士通製のキーボードでは疑似Nキーロールオーバーを「Fキーロールオーバー」と称している。


USBキーボードはUSB HID規格で定義されているboot protocolがほとんどの場合使われるが、その場合そのフォーマットの構造からくる制約により、完全Nキーロールオーバーの機種でも、同時押しを認識されるのは最大6キーまでとなる(キー自体は入力されるが、6キーより先は最初に押したキーから順に指を離した扱いとなる)。このためPS/2接続を好むユーザーもいるが、近年のマザーボードはレガシーデバイスが削除される傾向にあり、キーボードのためにマザーボードを選ぶ状況となっている。


この機能は主に複数同時押しを行うゲーマー向けキーボードで宣伝される事が多い。たとえばダイヤテックから発売されているマジェスタッチ、マジェスタッチリニアには、特別バージョンとしてNキーロールオーバーモデルが通常モデルとは別に存在する。大抵この機能を搭載したキーボードは1万円以上するのだが、シグマA・P・OがNキーロールオーバーではないものの、限定エリア内での複数キー同時押しを保証したキーボードを発売し、FPSゲーマー向けのエントリーモデルとなっている。


しかし、2010年にマイクロソフトが「2つのキーボードデバイスとして認識させる」事で「USB接続での最大26キー同時押し[1]」を実現した上、「実売価格で5000円台前後(2010年5月1日現在)」と言う低価格も実現した「SideWinder X4 Keyboard」が発表された[7]ことで、前述の状況は一変する事となった。



主なNキーロールオーバー対応キーボード




  • SteelSeries「SteelSeries 7G」


  • 東プレ「Realforce」シリーズ

  • ダイヤテック「Majestouch 2」シリーズ


  • PFU「Happy Hacking Keyboard Professional」


  • Logitech「G15 Gaming Keyboard(初代)」・「G11 Gaming Keyboard」

  • Kinesis「Kinesis Contoured Keyboard」・「Kinesis Maxim Ergonomic Keyboard」


  • サイズ CHERRY「MX-BOARD G80-3600」シリーズ

  • マイクロソフト「SideWinder X4 Keyboard」


  • ダーマ「DRTCKB109UP1」・「DRTCKB91UP2」



表示機能




光るキーボードの例


特殊なキーボードには特殊なステータス表示機能がついている場合がある。PC用のキーボードでは、一般的には、キャップスロック状態、ニューメリックロック状態、スクロールロック状態を3つのLEDによって表す表示機能が付いている。LEDの色はたいてい緑色か橙色であるが、青色が使われているものもある。PCで一般的に使われるATキーボード(PS/2キーボード)ではこれらの表示機能はコンピュータ本体から制御可能である。この制御がアプリケーションソフトウエアが実際に行えるかどうかはコンピュータで動作しているOSに依存する。GNU/Linux等の一部のOSでは、PC用のキーボード上のこの3つの表示機能を使い、OSからのパニック時のステータスを表示させることができるものもある。


ステータス表示用の他にも、全てのキーにLEDを内蔵し、その光で暗い部屋でもキー表示が見えるようにした物等もある[8]。売り出された当初は軍事用ではないか等の噂も立ったが、恐らくは派手な電飾を好むModding文化から由来した物であると考えられる[9]。但し、LEDではないものの、光るキーボード自体はバックライト用にエレクトロルミネセンスを使用したセンチュリーの蛍等、それ以前から存在していた。出所の怪しさやチェリー製のスイッチ等が注目を浴びた理由であろうと考えられる。


LEDだけではなく、キーボードに液晶表示を搭載する例もあり、ロジクール(ロジテック、Logitech)のゲーム用キーボードG15 Gaming Keyboardには、角度調節が可能なバックライト付きLCDパネルが搭載され、様々な情報が表示される。


また極めて特異な例ではあるが、ロシアのデザイン会社Art. Lebedev Studio[10]から、全てのキートップに有機ELディスプレイが内蔵されたOptimus Maximusキーボード [11] が2008年に発売された。キーが3個だけ搭載された簡易版となるOptimus mini threeキーボード[12]とその改良版も発売されている。



キー配列




  • QWERTY配列

  • Dvorak配列


  • 親指シフト配列(NICOLA配列)

  • DSK配列

  • JIS配列



その他


特定の機種専用のキーボードには、特殊なキーが用意されているものがある。下記はその例である。




  • ACPI対応キーボードや、ADB対応のMacintosh[13]やNeXTワークステーションにおいては、電源ボタンが用意されており、これ一つ押すだけで終了操作(設定によってはスリープ)を行うことができる。

  • 一部のパソコンでは、電子メールクライアントやウェブブラウザなどの特定のアプリケーションソフトを起動させるキーを持っているものがある(このためには、キーの操作を感知してソフトを起動する専用ドライバの常駐が必要となる場合もある)。

  • 近年[いつ?]のWindowsマシン向けのハードウェアには、Windowsで機能するWindowsキーとアプリケーションキーがついていることが多い。

  • Macintoshに代表されるアップル製キーボードにはコマンドキーとオプションキー(Altキーに相当)がついており、他のキーと組み合わせることでOSに様々な指示を与えることができる(キーボードショートカット)。

  • アップル製のUSBキーボードにはドライブの取り出しを行うイジェクトボタンがついている。

  • かつて[いつ?]パソコンが一般家庭に普及しだした頃に、コンピュータ画面に「 Press Any key to continue... 」「 …続けるにはどれかキーを押してください 」などと表示されたのを見た新規ユーザが、そのような “Any” “どれか” と刻印されたキーがキーボード上にあるものと誤解した (→Any key)。


  • トラックポイントやトラックボール、タッチパッドなど、ポインティングデバイスを内蔵したキーボードもある。



キーボードの機構



キースイッチユニット


様々なものがあるが、メカニカル・メンブレン・静電容量無接点が使用される事が多い。



メカニカルスイッチ




メカニカルスイッチの部品構成

キーの数だけ独立したキースイッチユニットを内蔵する。メカニカルのキーボードはキー押下時に音がするとの誤解もあるが、カチカチという音自体はスイッチに内蔵された音を出す為の機構によるものであり、キースイッチ自体からは音はせず[14]、またそれらの部品が内蔵されず音のしないメカニカルスイッチも多い[15]。コストの面でメンブレン方式に劣るため衰退しつつあるが、キー音の軽快さや入力の確実性、そして独特の打鍵感(キータッチ)を好むユーザに支持されている。ドイツのチェリー製のスイッチ[16]や日本のアルプス電気製のスイッチが有名である。スイッチがボタンの戻ろうとする力を吸収してくれるので、長時間のタイピングでも疲れにくい。ただし粗悪な物は、ある程度使うとチャタリングが発生する場合がある。

メンブレンスイッチ




メンブレンとラバードーム

メンブレン (Membrane) とは、日本語で膜、薄膜を意味する。2枚の接点シートの間に穴のあいた絶縁シートを挟み、キーを押すと接点が触れ合う仕組みとなっている。シートを押すための機構としては、ラバードーム、パンタグラフ、バックリングスプリングなどさまざまな種類がある。材質的に耐久性に限界があるものの、メンブレンとラバードームを使用したキーボードは安価に製造できるため、現在最も普及しているが、安価なものほど指先に反発の力がダイレクトに戻ってくるので長期間のタイピングには向かず、タッチの固いものは腱鞘炎になる危険性が指摘されている。


静電容量無接点


静電容量の変化でキー入力を検知する。機械接点が無いため静穏で、耐久性やキータッチを高められるが、高価になりがちという面もある。事実、普及価格帯での価格はメンブレン方式では1,000円 - 4,000円程度なのに対し、静電容量無接点方式では14,000円 - 24,000円程度である。IBM PC、PC/XT、PC/ATの初期の83/84キーボード、Sun Type4に代表されるKeyTronic製キーボード等がある。東プレ製のRealforceシリーズや、東プレOEMのPFU Happy Hacking Keyboard Professional等のキーボードが有名。金融機関や証券業界などでも広く使われている。

レーザー投影式




レーザー投影式キーボード

厳密にはスイッチというよりもむしろセンサーである。机の上にレーザー投影機とセンサーが一体となった装置を置き、机の上にレーザーで直接キーを投影し、そこに指を置くことによりそれをセンサーで感知して入力とするものである。装置は非常に小型で可搬性に優れ、ある程度のスペースと反射率のある机があればどこでも使用できるが、物理的なキーが存在しないためタッチタイプが難しく、構造上縦に並んだキーの同時押しが検知できないという欠点がある。



アクチュエータ


メカニカルスイッチはユニット自体にアクチュエータを内蔵している事がほとんどであるが、その他のスイッチの場合、スイッチを通電させたりキータッチを出したりするアクチュエータが存在する。



ラバードーム

主にメンブレンスイッチや静電容量無接点スイッチ等で使用される、半球状(ドーム以外にコーンの場合もある)のシリコーンゴム製の部品で、キーごとに独立しているものと、シート状に全てが一つにつながっているものがある。

パンタグラフ

外観・形状が鉄道車両のパンタグラフに似ているため、パンタグラフと呼ばれている。ラバードームとの組み合わせで使用されることが多い。中心から外れたところを打ってしまってもしっかりとキーを押せるという利点がある。構造的に薄く出来るので、ほぼ全てのノートパソコンに採用されているほか、一部のデスクトップパソコン向けキーボードに採用されている。指先に反発の力がダイレクトに戻ってくることや、構造上ステップスカルプチャ形状をとるのが困難であることなどから、長期間のタイピングには向かないとされていたが、低いキートップや短いキーストロークにより長時間のタイピングでも疲れにくいとする意見もある。近年は軽い打鍵感により指を滑らせるような軽快な入力が可能として、デスクトップパソコンでもパンタグラフキーボードを選ぶ者も多い。近年は隣接するキーとの間に枠を設け、各キーを独立した配置としたアイソレーションキーボードと呼ばれるデザインが流行している(外形はチクレットキーボードに似ている)。キー間に大きな隙間ができにくくゴミや埃が入りにくい、爪や指先がキーに引っかかりにくいといった長所がある。

バックリングスプリング


バックリングスプリングのしくみ



座屈ばね機構とも呼ばれる[17]。その名の通りキーに内蔵したスプリングを座屈(buckling)させることで明確なクリック感を出す機構である[18]。キーを押すと「カシュンカシュン」「パシュンパシュン」と、スプリングが折れ曲がってスライダの内部にぶつかる音がする。

右の図はIBMによる特許の図であるが、図によると、まず1のキートップを押し下げると2のスプリングが徐々に湾曲して行き、完全に折れ曲がると7を支点にして4が可動、スイッチが通電する。この瞬間、スプリングが折れ曲がり急激にキーの重さが低下する事によってクリック感が、スプリングがスライダ内部3にぶつかる事でクリック音が発生する。キーを離すとスプリングの弾力によって元に戻るというしくみである。12と13が完全に接触すると、それ以上キーは沈まない。このため明確な底付き感を発生させており、一般的なラバードーム等に見られるゴムを押すようなあやふやな底付き感と一線を画している。

かつてIBM社が生産していたキーボードが有名であり、その一連のシリーズは「Model M」と通称されている。

なお、あくまでアクチュエータがこのような構造になっているというだけであり、IBM社のキーボードの場合、スイッチの接点方式としては静電容量式とメンブレン式のものが存在した。すでにIBMの特許期間は切れているが、構造的に高コストになりがちであり、一部を除いて、製造・販売される事は稀である。



スタビライザー


シフトキーやスペースバーのような長いキーのどの位置を押しても正しくまっすぐ押下できるようにするための仕組みである。これを省略している安いキーボードは、シフトキーの端の部分を押すと、引っかかってスムーズに押せないものがほとんどである。初期のIBM PCのキーボードは、そのためキーの中央のみにキートップを付け、端の部分を押せない物としていた。



キートップ


主にキーの機能などが印字されている。たいていの場合表面にホームポジション・マーカがある。平らな物、球面状に窪んでいる物、円筒形に窪んでいる物などの種類がある。
平らなものはパンタグラフなど薄型キーボードに多く、球面状に窪んでいる物は昔の物に多かったようである。


印字方法には様々な種類があり、二色成型・昇華印刷・シルク印刷・レーザー印字などがある[19]。最も耐久性(印字の消えにくさ)に優れるのは二色成型だが、文字の種類だけ金型が必要なため、近頃ではコスト的な問題から採用されることはほとんどない。また、昇華印刷も一部の高級機種に用いられているのみであり、大多数のキーボードには専らシルク印刷(特にカラー印字がある場合)とレーザー印字が用いられている。


印字がされていない無刻印キーボードと呼ばれるものが存在する。キーボードの印字の重要性は、タッチタイピングをしない人に比べてタッチタイピングをする人は低い。また、タッチタイピングをする人は使いやすいようにキー配列をカスタマイズする場合があり、こうしたユーザにとって印字がされていないキーボードは、使い勝手が良いとの考えによるものである[20]



ホームポジション・マーカ


キーボードを見ずにホームポジションへ指を置けるようにキートップに施された工夫のことで、一般にはホームポジション各指のうち、両手の人差し指を置く「F」と「J」のキートップが、触れるだけで他のキーから判別できるようになっている。キートップ中央に小さな丸い突起を設けたものや、キートップ手前に横長の突起を設けたものが多い。「F」と「J」のキートップを他のキートップよりも深くえぐってあるものもある。テンキーを持つキーボードには中指用にテンキー部の「5」にも設けられている。俗にOld Worldと呼ばれるiMacより前の、つまりベージュのMacintoshのキーボードは、テンキー部に揃えてフルキー側も中指用の「D」と「K」キーに設けられており、右手のマーカー触感が統一されていた。親指シフトキーボードには、両手人差し指用に加えて両手小指用(Aと;キー)にも付いているものがあり、親指のシフトに伴って人差し指がホームポジションから大きく離れても、小指からホームポジションを探るための配慮がされてある。これらホームポジション・マーカはキーボードを見ないで文字入力する人達には非常に重要な存在である。



ステップスカルプチャ




ステップスカルプチャ


打鍵しやすくするため、あたかも階段のように上段のキーほど高くなっているステップ構造と、キーボード全体に指が届きやすくするため、上段・下段に対し中段が凹んでいるスカルプチャ構造との折衷構造の事である。特にキートップの指との接触部分が円筒形の溝になっている物はシリンドリカルステップスカルプチャと呼ばれる。スカルプチャには、実際のキーが曲面状に設置されているものや、キートップの形状で再現したものなどがある。


なお、シリンドリカルと言う単語は、キートップの表面の形状が円筒の内側のようなえぐれをしているものを差して使用されるのが本来であるが、最近ではスカルプチャと混乱しているようである。



チルトスタンド


タイプしやすいようにキーボード全体を傾けるための機構である。平たく言えばキーボードの足である。人間工学的には、奥を上げた方が良いという意見以外にも、手前を上げた方が良いなど異論もあり、実際に手前側を高くするためのチルトスタンドを装備したキーボードも存在する。



企業によるキーボードの名称




  • ステンレスメカキー - 2003年頃、SONYのノートパソコンであるVAIO XRシリーズなどで使われた。打鍵感は非常に良いものの、静音性が低くて重量も重いことから使われなくなった[21]。今でも復活を望む声がある[要出典]


  • カイテキー - SIIの電子辞書で使われている。


  • スーパーキーボード - 1999年頃松下電子部品(現: パナソニック エレクトロニックデバイス)が開発したキーボード[22]



メンテナンス


キーボードは恒常的に手で触れる性質上、汚れやすく、特に多数並んだスイッチの間に付着した手垢や埃は容易に拭き取れない。キーボードの前で飲食していると問題はより顕著となる。


キーボードを掃除するための製品として、ブラシ状で静電気を利用して吸着するもの、スプレーあるいはポンプで空気を吹き付けて使用するもの(エアダスター)、粘着性の樹脂を押し付けて使用するものなどが販売されている。キーボード用ではないが、ボールの空気入れがエアダスターの代わりに使える。
ゴミや毛などが溜まりがちな内部は、キーを抜いてから清掃を行うことできれいに清掃できる(しかし、パンタグラフ式やノートパソコンのキーボード等構造的に不可能なタイプもあるので気をつけなくてはならない)。キートップの汚れはキーを抜き市販の洗濯用ネットに入れた上で洗濯機で洗うことで比較的簡単に落ちるが、元に戻す際にキー配列がわからなくならないよう、キーを外す前にデジカメ等で撮影しておく必要がある。


こうした面倒を抜本的に解決するものとして、丸洗い可能なウォッシャブルキーボードのアイデアは古くから存在していた。中には全体が軟質素材の密閉構造で、丸洗いに加えて、小さく折りたたんだり丸めて携行可能なフレキシブルキーボードなどと称する製品も存在する。当初は使用感や耐久性などの点で玩具の域を出るものではなかったが、2010年代現在まで逐次改良されながらリリースされ続けている。



キーボード入力のミスに関わるジョーク等


誤植、誤変換の項目も参照。



  • タイプミス
    • sl (UNIX)


  • 入力モード変更ミス

    • シニス : MS-DOSでdirと打つ際に仮名入力モードにしていると表示される。


    • ミカカ : 同上、NTTと打った場合。NTTを指す隠語として使用された例がある。


    • ハニリイト : 同上、FILESと打った場合。(BASICで使われるコマンド)



  • その他
    • くぁwせdrftgyふじこlp




脚注


[ヘルプ]




  1. ^ スタパ齋藤の『これだ!!これで行くゼ!! 〜 IBM SpaceSaverキーボード 〜』等。


  2. ^ 極端なキーの詰め込み具合から「変態配列」等とも呼ばれ、特にタッチタイピングを行う場合は勝手が変わってしまうため一部のユーザには嫌悪されている。


  3. ^ タッチ操作の設計(Windows ストア アプリ)(Windows)


  4. ^ ピクニック企画, 堤大介, ed (1990-03-01). “オートリピート” (日本語). 『電脳辞典 1990's パソコン用語のABC』. ピクニック企画. pp. 24. ISBN 4-938659-00-X. 

  5. ^ abWeekly "Keyboard World" 『7. Capitals lock』


  6. ^ 一部のオペレーティングシステムにおいては、同時に押したキーが認識できない場合に、ビープ音が鳴るものもある。(マザーボード本体にスピーカーが搭載されている場合)


  7. ^ 4Gamer.net『ついに登場した「4桁円台半ば」の大本命 SideWinder X4 Keyboard』


  8. ^ TG3 Electronics BACKLIT 82 KEYS


  9. ^ Deck Backlit Keyboards


  10. ^ Art. Lebedev Studioを参照。


  11. ^ Optimus keyboard


  12. ^ Optimus mini three keyboard


  13. ^ Macintosh用キーボードは、ADBが廃止されUSBとなった後もしばらくは電源ボタンが搭載されていたが、OSのフリーズ時やハブを介しての接続では使用不能となった。


  14. ^ 但し、キーを最深部まで押下した時の底付き音や、押したキーが元に戻った時の音などは発生する。これらの音を軽減するためユニット内部にゴム製の部品を使用したスイッチもあり、Apple Extended Keyboard II等に使用されている。


  15. ^ チェリーの茶軸等。


  16. ^ チェリーキーボードMXキースイッチ


  17. ^ 鍵人『Buckling Spring Mechanisms』


  18. ^ IBM BucklingSpring Keyboard (IBM 5576-003, 5576-A01, 101model M, etc...)


  19. ^ Nogujyu Keyboard Mania キートップの文字


  20. ^ Tech総研『和田英一@日本初ハッカーはちょっと変わった絵を描く』無刻印HHK発売の経緯


  21. ^ 最速のCPUと最高解像度の液晶を搭載する無敵のA4ノートPC PCG-GR9E(別冊ASCII No.4 2002年2月5日)


  22. ^ 松下電子部品、打鍵感に優れるキーボードの詳細を公表




関連項目



  • 電磁波盗聴


  • キーボードの種類

    • キー配列

      • JISキーボード

      • 親指シフトキーボード


      • 速記用キーボード配列

        • ステノタイプ(英語版)

        • スピードワープロ





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外部リンク








  • キーボードコレクション(歴史的なキーボード)

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