国民投票


























国民投票(こくみんとうひょう、英語: referendumレファレンダム国民表決)は、国民が直接的な投票によって、国家的な議案を意思決定する制度[1][2]


国民投票は直接民主主義の制度の1つで、国民が直接決定するものである。このため間接民主主義の制度である議員の選挙や議会での議決などとは異なる。多くの国では間接民主主義と直接民主主義が併用されている。




目次






  • 1 用語


  • 2 概要


  • 3 議論


  • 4 各国の制度


    • 4.1 日本


    • 4.2 フランス


    • 4.3 ナチス・ドイツ(1945年までの旧ドイツ)


    • 4.4 ドイツ(1945年以降の西ドイツ、及び1990年以降のドイツ)


    • 4.5 イギリス


    • 4.6 スイス


    • 4.7 ブルンジ




  • 5 参考文献


  • 6 脚注


  • 7 関連項目





用語


レファレンダムを、日本では通常、日本以外の制度を含め、国政の場合は国民投票、地方自治の場合は住民投票と訳し分けている。



概要



国民主権の思想では、国民が政治権力の源であり、最終決定者である(民主権の原理)。古代ギリシアなどでは民会による直接民主主義が行われた。


しかし全ての問題を国民が直接的に発案・議論・決定する事には限界があるため、国民が代表者(議員)を選出し、国民の信託を受けた議員が議会にて発案・議論・決定する制度が普及した(間接民主主義・代表民主主義)[3]


これらの議会制度を採用した国でも、政治の重要事項については直接民主主義の「民主権の原理」が併用されるようになった[4]。「民主権の原理」を構成するのは『イニシアティブ(国民発案・住民発案)』『リコール(国民解職・住民解職)』『レファレンダム(国民投票・住民投票)』であり、国民投票はそのうちの一つである[5]。間接民主制と併用される直接民主制は、間接民主制を補う参政権として採用されたものである[6]


国民投票の結果には法的拘束力が生じる場合が多いが、アメリカ合衆国で行われる「タウンミーティング」など法的拘束力が生じない「諮問の投票」が行われている国や地域もある。



議論


ノーベル賞経済学者アマルティア・センは、為政者は政策に大幅な変更をする前に有権者の意思表示を求める必要があると論じる。例えば民主主義国家において、政府が緊縮財政政策を国民に強いる前には、その政策を施行する前に国民投票などで以って国民がその緊縮政策を容認するかどうかを確かめる必要があるのだ。民主的な社会に住みたいと考える人々は公衆の倫理的・政治的ルールの運用を回避すべきではないということである[7]


一方でリファレンダムは、一定期間後の再投票などが想定されていない場合には1回の投票で表決が決定するため、結果によっては敗北側の不満が残る[8]。なおスイスではリファレンダムの結果に対し、一定の前提条件を満たせば、後にイニシアティブにより再リファレンダムを行う事が可能である。



各国の制度



日本


日本国憲法では憲法改正の際の国民投票のみが規定されており、日本国憲法の改正手続に関する法律が存在する。また地方自治制度では、自治体の住民を対象として一定の住民投票の制度が設けられている。



フランス


フランスでは、為政者により、自身の統治を正当化することを目的とした国民投票が多用され、投票行為が人気投票・信任投票と化した国民投票を「プレビシット」と呼び、危険視している。通常の国民投票とプレビシットは、差別化して考えるべきであるという議論がある[9]



ナチス・ドイツ(1945年までの旧ドイツ)




1938年、アンシュルスにともなって行われた民族投票の投票用紙。「あなたは1938年3月13日に制定されたオーストリアとドイツ国の再統一に賛成し、我々の指導者アドルフ・ヒトラーの党へ賛成票を投じますか。」という設問で、「Ja(はい)」の項目が中央に大きく印刷されている。


ドイツでは、第一次世界大戦後に制定されたヴァイマル憲法下で直接民主制の要素が部分的に採用され、国民の請願や国会の議決で発議できる国民投票が制度化されていたが、ドイツ帝国構成諸国旧君主の財産接収(ドイツ語版)やヤング案受け入れ問題など野党が国民投票を利用した。


ナチス・ドイツ体制期の1933年7月14日には「民族投票法」が制定され、民族投票(ドイツ語版)制度が導入されたが、これは従来の国民投票と異なり、政府にしか発議権が存在しなかった[10]。民族投票はヒトラーの国家元首就任(総統)や国際連盟脱退、ラインラント進駐、アンシュルスの際に行われた。これらはいずれも高い賛成票を得、ヒトラー政権の政策の正当性をアピールしたが、すべて事後に行われた投票であり、法的には信任投票程度の意味しか持たなかった。



ドイツ(1945年以降の西ドイツ、及び1990年以降のドイツ)


第二次世界大戦後のドイツ連邦共和国基本法にも国民投票の規定はあるが、国土の変更や憲法改正のみが対象となっている。



イギリス



2014年6月、イギリスとの分離独立について、2014年にスコットランドの独立を問う国民投票が行われたが、独立への反対票が有効票数の55.30%となり、分離独立は否決された。[8]



2016年6月、「欧州連合に残留するか・離脱するか」について国民投票が行われ、EU離脱派が51.89%となり、離脱が可決された。



スイス


議会の提案で憲法を改正する場合には、投票者の過半数が賛成していることと、賛成票数が過半数を越える州が、12.5州以上であることを同時に満たさねばならない。(準州は、0.5 州として計算される)。他にも、他国との条約の締結や、国際機構への加盟を批准する場合に、この方法が用いられている。国民の提案で憲法を改正する場合には、国民10万人の署名を集めることで憲法改正を議会に要求することができる。その後、国民による再審議を経てレファレンダムを行い、国民投票によって改正の可否を問うことができる。また、連邦議会によって議決された憲法以外の法案については、国民5万人の署名を集めることで、国民はレファレンダムを行うことができる。レファレンダムでは、全ての国民に対し再審議を求めることができ、これを経て国民投票を行う。投票終了後の開票結果が、その法案に対する議決となる。


スイスのレファレンダムと国民投票を主導するのは、議会ではなく国民である。このような参政権の形態はイニシアティブ(国民発議)と呼ばれている。[11]。日本をはじめ、他の国の間接民主制でいう国民投票と大きく異なる点は、議会が国民投票を主導しないことと、国民投票で議決された事項を、再び国民投票にはかるためのイニシアティブ(国民発議)の制度が定着していることである。[12][13]



ブルンジ


憲法を改正する場合に国民投票を行う。直近では2018年5月に行われているが、多選を批判されていたピエール・ンクルンジザ大統領が反対勢力を封じ込めるため、投票の棄権を呼び掛けた者に最大3年の禁錮刑を科すという制限が加えられたものであった[14]



参考文献



  • 南利明『〈論説〉指導者‐国家‐憲法体制の構成』静岡大学法政研究第7巻3号


脚注


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  1. ^ 編集委員、太田正行 他4名(1995)。"政治・経済用語集 p.12 民主政治の原理:国民投票" 山川出版


  2. ^ 小嶋和司、立石眞 『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』 有斐閣、2011年、157頁。ISBN 4-641-11278-0{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。


  3. ^ 松元忠士(1995)。"『日本国憲法(上)』p.323 第22節 参政権" 敬文社


  4. ^ 松元忠士(1995)。"『日本国憲法(下)』p.323 第22節 参政権" 敬文社


  5. ^ 編集委員、太田正行 他4名(1995)。"政治・経済用語集 p.12 民主政治の原理:国民投票" 山川出版


  6. ^ 編集委員、太田正行 他4名(1995)。"政治・経済用語集 p.12 民主政治の原理:国民投票" 山川出版


  7. ^ Austerity-hit Europe has democratic deficit, says Nobel winner Amartya SenB. Ginns, The Yorkshire Post, Business News, 11 June 2015

  8. ^ ab[1]No-vote victory celebrations in Glasgow as tensions rise after divisive referendum sees Scotland stay in union


  9. ^ 衆議院 欧州各国国民投票制度調査議員団 報告書 277頁 「2 プレビシット」 (出典:辻村みよ子 「レフェレンダムと議会の役割」 『ジュリスト1022号』(1993年)124頁


  10. ^ 南利明 & 指導者-国家-憲法体制における立法(一), pp. 82-83.


  11. ^ Der Run auf direkte Demokratie


  12. ^ Volksinitiativen in der Schweiz


  13. ^ Popular initiatives in Switzerland


  14. ^ “ブルンジ大統領、2034年まで任期延長可能に 改憲国民投票で圧勝”. AFP (2018年5月22日). 2018年5月22日閲覧。




関連項目



  • 住民投票

  • 直接民主制

  • 一般国民投票












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