損害保険
損害保険(そんがいほけん、英: general insurance, non-life insurance 、仏: assurance de dommages)とは、損害保険会社が取り扱う保険商品の総称。略して損保(そんぽ)とも呼ばれる。
風水害などの自然災害や自動車の衝突事故など、偶然な事故により生じた損害を補償するのが目的であり、保険会社が予想する損害率に応じて保険料(損害保険料)が定められる。
大きく分けて、自動車保険や火災保険などのノンマリン分野と、貨物保険や船舶保険などのマリン分野とがある。日本では、保険業法を根拠法とし、金融庁による監督のもと個人から法人まで多くの者を契約対象に販売されているものが殆どであるが、火災共済など、保険業法以外に根拠法のある損害保険もある。
目次
1 損害保険契約
2 主な損害保険の分野
2.1 ノンマリン分野
2.2 マリン分野
3 損害保険会社
3.1 日本損害保険協会加盟会社
3.2 外国損害保険協会加盟会社
3.3 その他の損害保険会社
3.4 経営破綻し消滅した損害保険会社
3.5 合併・移転により消滅した損害保険会社
4 海外旅行傷害保険が付帯されているクレジットカード
5 損害保険業界の不祥事
5.1 保険金等の不当な不払い
5.2 保険料取りすぎ問題
5.3 保険金詐欺との関連
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
損害保険契約
主な損害保険の分野
ノンマリン分野
火災保険
地震保険(単独加入は不可。必ず住宅火災保険などと併せて加入する)- 住宅火災保険
- 住宅総合保険
- 普通火災保険
- 店舗総合保険
- 団地保険
自動車保険
自動車損害賠償責任保険(俗称・自賠責保険)- 任意自動車保険
- 自転車保険
- TSマーク
- 傷害保険
- 普通傷害保険
- 家族傷害保険
- ファミリー交通傷害保険
- 国内旅行傷害保険
- 海外旅行傷害保険
- ゴルファー保険
- 所得補償保険
- 医療費用保険
- 介護費用保険
- 賠償責任保険
- 動産総合保険
- ヨット・モーターボート総合保険
- コンピュータ総合保険
- ペット保険
- 自動車や家電製品などの延長保証(販売店自身のほか、外部の保険会社と契約して提供される場合がある)
マリン分野
海上保険
- 船舶保険
- 運送保険
- 貨物保険
損害保険会社
保険業法第7条により、損害保険会社は商号中に内閣府令(保険業法施行規則、平成8年大蔵省令第5号)で定めた文字を入れなければならない。具体的には次の通りである(施行規則第13条2項)。
- 火災保険
- 海上保険
- 傷害保険
- 自動車保険
- 再保険
- 損害保険
日本損害保険協会加盟会社
大手損保会社
東京海上ホールディングス
東京海上日動火災保険(2004年10月、東京海上火災と日動火災海上が合併)
日新火災海上保険(2006年9月、完全子会社化)
イーデザイン損害保険(2009年1月、NTTファイナンスとの共同出資により設立)
SOMPOホールディングス
損害保険ジャパン日本興亜(2014年9月、損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が合併)
セゾン自動車火災保険(旧:オールステート自動車・火災保険。クレディセゾンとの共同出資)
そんぽ24損害保険(旧:安田ライフダイレクト損害保険、個人向け自動車保険が主力)
MS&ADインシュアランスグループホールディングス
三井住友海上火災保険(2001年10月、三井海上火災と住友海上火災が合併)
あいおいニッセイ同和損害保険(2010年10月、あいおい損害保険とニッセイ同和損害保険が合併)
三井ダイレクト損害保険(2000年6月に営業開始。個人向け自動車保険が主力)
中堅損保会社
AIG損害保険(AIGグループ。2018年1月、AIU損害保険が富士火災を合併し商号変更)
明治安田損害保険(明治安田生命グループ。2005年4月に明治損害と安田ライフ損害が合併)
共栄火災海上保険(JA共済連が筆頭株主)
大同火災海上保険(沖縄県が地盤)
楽天損害保険(楽天グループ。旧:朝日火災海上保険。かつては野村ホールディングスの子会社)
アクサ損害保険(アクサグループ)
ソニー損害保険(ソニーグループ。ソニーフィナンシャルホールディングスの子会社)
日立キャピタル損害保険(日立グループ。旧:ユナム・ジャパン傷害保険。2004年1月、日立キャピタルと損害保険ジャパンが共同出資)
セコム損害保険(セコムグループ。旧:東洋海上火災→セコム東洋損害)
ジェイアイ傷害火災保険(1989年7月、JTBとAIGの共同出資で設立。旧:ジャパン・インターナショナル傷害火災保険。海外旅行保険が主力)
新興損保会社(2000年以降設立)
エイチ・エス損害保険(2005年5月、H.I.S.と澤田ホールディングスの共同出資で設立。海外旅行保険が主力)
SBI損害保険(SBIホールディングスとあいおい損害保険、ソフトバンクが共同出資、2008年1月営業開始)
au損害保険(KDDIとあいおい損害保険が共同出資、2011年5月営業開始)
アニコム損害保険(アニコム ホールディングスの中核会社。ペット保険が主力)
アイペット損害保険(ドリームインキュベータが出資。ペット保険が主力)
再保険会社
トーア再保険(旧:東亜火災海上再保険。日本で唯一の総合再保険専門会社)
日本地震再保険(日本で唯一の地震再保険会社)
会社名 | 関連グループ | 正味収入保険料 | 当期純利益 | 総資産額 |
---|---|---|---|---|
東京海上日動火災保険 | 東京海上ホールディングス | 2,116,121 | 301,610 | 9,524,466 |
日新火災海上保険 | 東京海上ホールディングス | 140,118 | 6,579 | 417,919 |
イーデザイン損害保険 | 東京海上ホールディングス | 25,723 | 7,568 | 44,505 |
大同火災海上保険 | 16,802 | 535 | 40,049 | |
損害保険ジャパン日本興亜 | SOMPOホールディングス | 2,165,694 | 164,401 | 7,568,779 |
セゾン自動車火災保険 | SOMPOホールディングス | 33,233 | ▲5,948 | 51,655 |
日立キャピタル損害保険 | 日立キャピタルグループ | 3,653 | 865 | 14,869 |
そんぽ24損害保険 | SOMPOホールディングス | 13,312 | 1,715 | 23,696 |
三井住友海上火災保険 | MS&ADインシュアランスグループホールディングス | 1,469,699 | 164,568 | 6,777,076 |
三井ダイレクト損害保険 | MS&ADインシュアランスグループホールディングス | 37,653 | ▲1,004 | 59,987 |
あいおいニッセイ同和損害保険 | MS&ADインシュアランスグループホールディングス | 1,200,525 | 50,391 | 3,498,264 |
SBI損害保険 | SBIホールディングス | 23,166 | 1,551 | 33,870 |
au損害保険 | KDDIグループ | 6,102 | ▲1,271 | 9,747 |
富士火災海上保険 (※2018年1月1日、AIU損害保険に合併。AIG損害保険に商号変更) | AIGグループ | 233,655 | ▲28,473 | 824,308 |
ジェイアイ傷害火災保険 | AIGグループ JTBグループ | 15,982 | 247 | 28,456 |
アクサ損害保険 | アクサグループ | 49,929 | 1,145 | 87,722 |
共栄火災海上保険 | JA共済連 | 166,217 | 2,281 | 640,027 |
ソニー損害保険 | ソニーフィナンシャルホールディングス | 100,274 | 3,515 | 186,537 |
朝日火災海上保険(現在の楽天損害保険) | 楽天グループ | 36,619 | 555 | 368,905 |
セコム損害保険 | セコムグループ | 43,868 | 1,278 | 217,006 |
明治安田損害保険 | 明治安田生命グループ | 15,259 | 1,444 | 59,512 |
エイチ・エス損害保険 | H.I.S.グループ | 3,092 | 67 | 4,066 |
アニコム損害保険 | アニコムホールディングス | 28,068 | 1,788 | 26,038 |
アイペット損害保険 | 10,067 | 196 | 2,886 | |
トーア再保険 | 174,970 | 11,066 | 507,469 | |
日本地震再保険 | 114,114 | 1 | 511,297 |
外国損害保険協会加盟会社
国内の損害保険会社と同じく、金融庁から保険業法に基づく免許を取得している会社である。
AIG損害保険(アメリカ合衆国)
アメリカンホーム医療・損害保険(アメリカ合衆国)
アリアンツ火災海上保険(ドイツ)- アトラディウス信用保険(オランダ)
カーディフ損害保険(フランス)
Chubb損害保険(スイス)- コファスジャパン信用保険(フランス)
ユーラーヘルメス信用保険(ドイツ)
ゼネラリ保険(イタリア)- HDI Global 保険(ドイツ)
現代海上火災保険(韓国)
ロイズ保険組合(イギリス)
ミュンヘン再保険(ドイツ)- ニューインディア保険(インド)
- アールジーエー再保険(アメリカ合衆国)
- スター保険(アメリカ合衆国)
スイス再保険(スイス)- スイス損害保険(ルクセンブルク)
- トランスアトランティック再保険(アメリカ合衆国)
チューリッヒ保険(スイス)
その他の損害保険会社
ダウム自動車保険(韓国)
KB損害保険(韓国)
経営破綻し消滅した損害保険会社
- 第一火災海上保険
合併・移転により消滅した損害保険会社
- (東京海上日動火災保険)
- 東京海上火災保険
- 日動火災海上保険
- (損害保険ジャパン日本興亜)
損害保険ジャパン
- 安田火災海上保険
- 日産火災海上保険
- 第一ライフ損害保険
- 大成火災海上保険 → 2002年12月、損害保険ジャパンに吸収合併
日本興亜損害保険
- 日本火災海上保険
- 興亜火災海上保険
- 太陽火災海上保険 → 2002年4月、日本興亜損害保険に吸収合併
- (三井住友海上火災保険)
- 三井海上火災保険(旧:大正海上火災保険)
- 住友海上火災保険(旧:大阪住友海上火災保険)
- 三井ライフ損害保険 → 2003年11月、三井住友海上火災保険に包括移転
スミセイ損害保険 → 2011年1月、三井住友海上火災保険に包括移転
- (あいおいニッセイ同和損害保険)
あいおい損害保険
- 大東京火災海上保険
- 千代田火災海上保険
ニッセイ同和損害保険
- 同和火災海上保険
- ニッセイ損害保険
アドリック損害保険 → 2011年6月、あいおいニッセイ同和損害保険に包括移転
- (明治安田損害保険)
- 明治損害保険
- 安田ライフ損害保険
- (AIG損害保険)
- AIU損害保険
- 富士火災海上保険
海外旅行傷害保険が付帯されているクレジットカード
当該クレジットカードを利用して、航空券などを購入した場合のみ、損害保険(海外旅行傷害保険)が適用されるクレジットカードがある。
この節の加筆が望まれています。 |
損害保険業界の不祥事
保険金等の不当な不払い
2005年9月27日、日本の損害保険会社の内の16社にて、保険金の大量不払いがあった事が発覚[1]。その後の調査で保険金不払いが確認されたのは26社にまで達した。不払いは合計で約18万件、84億円に達し、不払いが確認された契約の大半が自動車保険の特約に集中していた。このため、金融庁がこの26社へ業務改善命令の行政処分を行った[2]。その後、2006年8月11日から上記26社の再調査を実施したところ、さらなる大量の不払いがあったことが判明し、合計で約31万8000件、187億円分という結果になり、先の行政処分が全くの無意味に終わっていたことが明らかになった[3]。
なお、損保業界の不払い問題はこれで終わらず、2006年6月の三井住友海上火災保険による第三分野保険での不払いが発表されたのを皮切りに、2006年11月には第三分野保険で不払いを行っていた損保会社は計14社にまで膨れ上がった。そして2007年3月14日には、そのうち10社が第三分野保険での多数の不適切な不払いを理由に金融庁より業務改善命令を受け、さらにそのうち6社は努力が不十分として業務停止命令を受けるに至った。
このように、不払い調査をしたその後に新たな不払いが大量発覚することが相次いだため、金融庁は2006年11月17日に不払いが発覚した損保26社に対して不払い調査のやり直し(通算3回目の不払い調査)を命じた。調査完了時期は保険会社により異なるが、2007年7月2日に損保26社全てでの調査が完了し、合計で約49万件、金額にしておよそ381億円という結果になった[4]。
また、こうした不払い問題の全容が明らかになるにつれ、保険募集人(保険販売員、保険代理店など)による商品販売時の不適正行為が不払いの原因となった事案も目立つようになった。これを受けて、募集人資格を設けている日本損害保険協会は、こうした状況を是正し募集人の法令遵守への意識を高めるために、2008年4月から募集人資格に更新制度を取り入れる方針を固めた(それまでの募集人資格は、基本的に一度取得すれば無期限で有効なものである)[5]。
多数の保険会社で次から次へと不払いが発覚してしまうという、まさに異常な状態となってしまった損保業界であるが、これは「商品の販売だけを最重要視し、後の保障や既契約者のことは二の次三の次」といった営業・利益最優先の体制によって、既存の顧客を軽視していたために引き起こされてしまった当然の結果であり、損保業界への社会からの信用が急速に薄らいだ。なお、各損保会社はこの件に対して、商品の複雑化に伴うシステムチェック機能の甘さおよび伝達の遅れといった内部管理の杜撰さが原因と弁明している。
保険料取りすぎ問題
2×4(ツーバイフォー)工法によって建築された建造物は、一般の木造建築物よりも耐火性能に優れているため、その分火災保険に対する保険料の割引が適用される。しかし2006年12月10日には損保大手6社にて、この割引を適用せず保険料を過徴収していた事例があったことが明らかになり、問題化した。
当初は火災保険のみの問題、すなわち「火災保険料取り過ぎ」と見られていたが、その後の調査で地震保険や自動車保険、その他傷害保険等でも同様の取り過ぎ行為を行っていることが判明した。
保険金詐欺との関連
この事件が起きた後、保険会社による保険金支払い基準が一時的に緩くなった。不払いを恐れるがあまり、モラルリスク案件と疑われるものでも保険金支払いが比較的安易に行われるようになってしまった。裁判に持ち込まれた案件でも、被保険者に有利な判決が続いた時期があった。しかし、原油高や不況によるアフターロス(契約期間偽装)、偽装事故、便乗案件等と疑われる事例が増え保険会社の損害率が増加するにつれて、保険会社側でも手間はかかっても事故に関して整合性を技術的に確認し、物的に立証できた案件については支払を拒否するなどコンプライアンスを維持しつつ自衛の手段を取らざるを得なくなってきている。本来、こういった手段を用いるのは請求額の多い案件が多く、保険金詐欺を狙ったプロによるもので手口も巧妙で立証が難しいものが多かったが、最近では一般の素人によるもので請求額も低いものが増えてきている。尚、保険会社では立証によって詐欺案件と断定できた場合は請求者に対して調査にかかった費用全額を請求すると共に、特に悪質な場合は警察に詐欺未遂で告訴することもある。また、裁判においても保険会社のこういった取り組みによって、物的証拠がきちんとしているケースにおいては偽装と判断される判例が増えてきている。
脚注
^ 16社で16万件、67億円 各社調査で明るみに - しんぶん赤旗 2005年9月27日
^ 損害保険会社26社に対する行政処分について - 金融庁 2005年11月25日
^ 損保不払い:昨秋の公表以降102億円判明 - 毎日新聞 2006年10月13日
^ 自動車保険など損保、不払い49万件・26社 - 日経新聞 2007年7月3日
^ 損保販売、資格に更新制度・不払い続出で - 日経新聞 2007年2月8日
関連項目
- 保険
- 生命保険
- 第三分野保険
- 損害保険料率算出機構
ケータイ補償お届けサービス(携帯電話版損害保険)- トラベル・アシスタンス
- 損害保険登録鑑定人
外部リンク
- 損害保険料率算出機構
- 日本損害保険協会
- 日本損害保険代理業協会
- 損害保険契約者保護機構