果実











梅の果実


果実(かじつ)




  1. 生物学上:受粉した雌しべの子房が発達した部分と、その付属器官のことである。単に(み)とも言う。


  2. 実用上:果物や野菜として利用される。




目次






  • 1 生物学上の果実


    • 1.1 果実の分類




  • 2 実用上の果実


    • 2.1 真果に属する果物


    • 2.2 偽果の例




  • 3 脚注


  • 4 関連項目





生物学上の果実





ガマズミの果実。ガマズミは鳥類に被食されやすいよう進化した果実であり、小さい実と目立つ色彩をしている


生物学的には、果実とは被子植物の、その中に種子を含む構造のことである。被子植物の種子は子房の中で成熟するから、子房が果実になる部分であり、すべての被子植物の種子は果実に入っている。いわゆる果実という言葉が肉質で食せるものとの印象を与えるのは、そのような果実を形成する種が少なからずあってそれがヒトにとって重要な食料であったことによる。このような果実は、植物の繁殖戦略として、動物の食料になる部分を種子の周りに発達させ、食われることで動物の体内を通じて種子の散布をおこなうという目的のために進化したものであると考えられる[1]。こうした被食用の進化は、被食される対象に応じてそれぞれ進化方向が異なり、それに対応した果実を実らせるようになっている。たとえば鳥類に被食されるために進化したものにおいては樹木の上方に結果し、大きさは小型のものが多い鳥類に合わせ数mm程度であり、視覚に訴えかけるために目立つ色彩をしている。逆に哺乳類は鳥類に対し嗅覚が強いため、香りを強く放つよう進化したものが多い。このほか、目立つ色彩と強い香りを併せ持ち、鳥類・哺乳類双方に捕食されやすいように進化した果実も存在する[2]。人類はこうした果実を食料とするため、畑で果菜を、果樹園で果樹とその果実である果物を栽培するが、これも広義においてはこの流れの中に属するといえる。逆にそのような部分を持たない場合、一般には果実と認識されない例も多い。後述の痩果は、往々にして種子と同一視される。


裸子植物は果実を形成しないが、食べられる部分を種子のそばに持つものもある。花床がやわらかく発達して食べられるようになるイヌマキなどの例がある。


動物の側から見ると果実は往々にして糖類に富み、消化のよい食物である。そのため葉や茎を食べる草食動物のような消化の難しさはなく、特殊な適応はさほど必要ない。したがって、果実食と草食はかなり異なるものと考えた方がよい。果実食をメインとする食性を持つ動物は果実食動物(果食動物、Frugivore)と呼ばれるが、完全な果実食でなくとも、雑食動物に分類される動物の多くは果実食を行っており、オランウータンのように雑食のうちでも果実食をメインとするものも存在する。人類も雑食動物であり当然果実を食用とするが、菜食主義者の中でも最も急進的な一派は果実食主義(Fruitarianism、果食主義)を取り、果実と種子以外のすべてのものを摂取しない。これは、食肉は動物を殺すために食用としないとして、卵や乳製品や蜂蜜といった動物由来のすべての食品を取らない点においてヴィーガニズムと共通する。しかし果実食主義者は穀物や根菜、葉野菜といった植物の生存に直結する部分、すなわち「植物を殺す」部分を食することすら拒否し、植物の生存に直結しない果実(果菜および果物)と種子のみを摂取する点において、より急進的である。ただし本来雑食生物である人類において果実・種子のみに食生活を頼ることには無理があり、動物や穀物に多く含まれているいくつかの必須栄養素が必然的に不足することとなる。



果実の分類


果実の皮(果皮)が乾燥した状態になるものを乾果(かんか)という。これに対して、果皮が柔らかく汁気の多いものを液果(えきか)あるいは多肉果という。




  • 乾果 - 乾果は、果皮が割れて種子が出るかどうかで閉果(へいか)と裂開果(れっかいか、裂果とも)に分かれる。


    • 閉果 - 閉果は、果皮が乾燥した状態で熟して、種子が果皮に閉じ込められたままのものである。往々にして、果実ではなく種子であると見誤られる。果実の分かれ方と果皮と種子の関係で以下のように分ける。

      • 分かれない


        • 痩果(そうか) - 果皮と種皮が密着して分かれないもの。ヒマワリ、タンポポなど。


        • 穎果(えいか) - イネ科にみられる果皮と種皮がより密着している痩果。


        • 胞果 - 果皮と種皮が分かれる。


        • 堅果 - 外側が非常に堅くなっているもの。ドングリやヤシなど。また、ドングリの台のような部分を殻斗(かくと)という。


        • 翼果 - 果皮が翼のようになった果実。カエデなど。



      • 果実が分かれる


        • 分離果 - 子房に複数の部屋があって、熟すると部屋ごとに分かれるもの。


        • 節果 - マメの鞘(果皮にあたる)が、種子ごとに節を持っていて、種子一つ毎に折れて散布されるもの。ヌスビトハギなど。






    • 裂開果 - 果実が種子の袋のようになり、成熟するとどこかに口を開いて種子が出るようになるものである。


      • 袋果 - 雌蕊が分かれている(離生心皮)で、その内側に向いた面に割れ目ができるもの。


      • 豆果莢果) - いわゆる豆の莢の形のもの。雌蕊が左右から平らで、内部は一室、成熟時には左右に割れる。


      • 角果 - アブラナなどの果実。雌蕊の内部は中央に仕切りがあり、それを残して左右の殻がはがれるもの。細長い場合は長角果、長さが短い時には短角果という。


      • 蒴果(さくか) - 雌蕊の中が放射状に複数の仕切りで分けられ、果実が成熟した時は、それぞれの部屋ごとに縦に割れ目を生じる。つまり心皮の数だけの割れ目ができる。スミレなどがそうである。また、以下のようなものもこれの範疇に入る。


        • 孔開蒴果 - 成熟すると、果実の決まった場所に穴が開く。


        • 蓋果 - 果実の上の部分が蓋のように外れる。オオバコなど。








  • 液果漿果(しょうか)) - 成熟した時に肉厚で汁気の多い果肉に包まれるもの。普通は割れて種子を出すことはない。一般に言う果実はこのようなものを指す。種子の数や内部の構造からいくつかに分ける。


    • 核果石果) - 種子は中心に一個あり、種子の外側に堅い殻(核という)を持つ。これは内果皮が堅くなったものである(モモなどの食用部を食べた後の普通「タネ」と言われている部分。真の種子はこの「タネ」の中にある)。


    • 真正液果 - 種子の外側が特に堅くならないもの。




  • 特殊な果実


    • ナシ状果ウリ状果(後述)


    • 集合果 - 一つの花から複数の果実が集まった形のものが生じる場合、これを集合果という。果実の集まりであるが果実そのものではない。以下のようなものがある。


      • キイチゴ状果 - 核果が集まった形。


      • イチゴ状果 - 花托(花床ともいう)が肉質に膨らみ、その外側に痩果が並ぶもの(オランダイチゴなど)。


      • バラ状果 - 花托が肥大し、その中に多数の痩果が入っているもの(ハマナスなど)。


      • ハス状果 - 花托がロート状に肥大し、その上に穴があり穴の中に堅果が入るもの(ハスなど)。




    • 複合果 - 密集した花序が一つの果実のようになるものを複合果という。マムシグサの肉穂花序が柔らかい果実の集まりとなるのがその例である。複合果は、花序が一つの果実のように見えるが、果実そのものではないので偽果である。


      • イチジク状果 - 隠頭花序の花托が肥大し、一つの果実にようにみえるもの(イチジクなど)。


      • パイナップルなども特に名称はないが複合果の一種である。







実用上の果実


実用的には、果実とは、花が咲いた後にできる、食用になるもので、種子を食用にするもの以外のものをさす。種によっては主に発達するのが子房ではなく、花托や果枝などを由来とする組織が果実を構成している。子房からなる果実を真果とよび、子房以外からなる果実を偽果とよぶ。また一般に、その果実の種類が真果か偽果かは、子房の位置から判断することができる。真果であるか偽果であるかは、食用とする場合においてはそれほどかかわりはなく、どちらに属する食用果実も存在する。また、主に樹木になる果実を果物と呼ぶが、「果物」という言葉は一般的には甘みの強い食用果実のことを指すため、スイカやメロン、イチゴなど草本性の果実も果物と分類されることが多い。また、木本性の果実にはアボカドのように甘みの全くないものも少数存在するが、これは果物に分類されるのが一般的である。果物のほか、草本性の果実で甘みの弱い、またはまったくないものは野菜に分類されることがほとんどであり、果菜と呼ばれ、トマトやナスなどがこれに属する。



  • 真果の場合

    • その果実の子房が萼(がく)や花弁より上部に付いている=子房上位であるとき

    • その果実の子房がカップ状の花托の内側に付いており、その花托の縁(へり)に萼や花弁が付いている=子房中位であるとき



  • 偽果の場合
    • その果実の子房が萼や花弁より下部に付いており、子房が花托と合着している=子房下位であるとき




真果に属する果物


真果に属する果物としてはモモやカキ、ミカンなどの柑橘類、ウメやスモモ、サクランボなどがある。




偽果の例



イチゴ

花托が肥大した部分を食用にする。表面の小さい粒々が果実(痩果)。イチゴ状果という。


リンゴ、ナシ

花托が肥大した部分を食用にする。いわゆる芯の部分が外果皮-内果皮にあたる。ナシ状果という。

イチジク

隠頭花序の肥大したものを食用にする。イチジク状果という。

バナナ








ビワ

花托が肥大した部分を食用にする。白い皮の部分が子房である。


スイカ、メロン

外果皮は硬く、その内側は水分が多い。花托も肥大し果実のようにみえるので偽果である。ウリ状果という。




脚注


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  1. ^ 「樹木学」p131 ピーター・トーマス 築地書館 2001年7月30日初版発行


  2. ^ 「森林の百科」p217 朝倉書店 2003年12月1日初版第1刷



関連項目






  • 単為結果










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