ヘテロロボサ
ヘテロロボサ | |||||||||||||||
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Percolomonas の1種。 | |||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||
Heterolobosea Page and Blanton | |||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||
Heterolobosean | |||||||||||||||
亜門[1] | |||||||||||||||
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ヘテロロボサ (Heterolobosea) は、無色の原生生物の一群で、ペルコロゾア (Percolozoa) とも。これらは総称的に、シゾピレヌス類、アメーバ鞭毛虫類、バールカンピア類などとも呼ばれている。
目次
1 特徴
2 分類
2.1 現行の分類
2.2 系統
2.3 分類史
3 参考文献
特徴
アメーバ、鞭毛虫、シストといった形態の間を変態できる生物が含まれる。ここには集合して子実体を作る社会性アメーバ(細胞性粘菌)のアクラシス類も含まれる。これら全体をヘテロロボサと呼ぶが、この名をアメーバ期を持つ生物群に限定して使うこともある。
ヘテロロボサ類は淡水環境、土壌、糞便中などの細菌捕食性生物として見つかるが、海水産のものも知られている。また人間に対してしばしば致死的な病原性を示すフォーラーネグレリア Naegleria fowleri のような寄生性の種もある。ユーグレノゾアと近縁であり、ミトコンドリアのクリステが団扇型をしているという珍しい特徴を共有している(盤状クリステ類)。鞭毛虫期において腹側に捕食のための溝が存在することなどからエクスカバータに含まれると考えられる。
アメーバ期はだいたい円柱形で、標準的には長さ 20–40 μm くらいである。伝統的には葉状根足虫(典型的なアメーバ類)だと考えられてきたが、他の葉状根足虫との近縁性がない上に、本当の意味での葉状仮足を作ることもない。葉状仮足ではなくて、透明な細胞の前縁部から半球状の隆起が生じてうねることで前進する。鞭毛虫期はやや小さく、捕食のための溝の前部に2または4本の鞭毛がある。
餌が豊富にある時には通常はアメーバ形をとり、鞭毛虫形は高速移動をするためにある。しかしヘテロロボサ類の全ての生物が両方の形になることができるわけではない。Percolomonas、Lyromonas、Psalteriomonas は鞭毛虫としてのみ知られており、一方で Vahlkampfia、Pseudovahlkampfia やアクラシス類は鞭毛虫期を持たない。アクラシス類は不都合な条件下では集合して子実体を形成する。この子実体の形成過程は典型的な細胞性粘菌であるディクチオステリウム類のそれに似ているが、アメーバは個々に集合しているだけで、柄と胞子の2つに細胞が分化するようなことはない。
分類
現行の分類
Pharyngomonadidae と Tetramitia の2群に分かれる[2]。これを Pharyngomonada と Tetramitia の2亜門とすることもある[1]。
それらはさらに8科:
Pharyngomonada
Pharyngomonadidae Cavalier-Smith and Nikolaev, 2008
Tetramitia
Acrasidae Van Tieghem, 1880
Vahlkampfiidae Jollos, 1917
Stephanopogonidae Corliss, 1961
Gruberellidae Page and Blanton, 1985
Psalteriomonadidae Cavalier-Smith, 1993
Lyromonadidae Cavalier-Smith, 1993
Percolomonadidae Cavalier-Smith and Nikolaev, 2008
に分かれる[3][1]が、Vahlkampfiidae は側系統で、Tetramitia 内の他の6科を内包するため、分割される必要がある[3][1]。また、いずれの科にも含まれない属も多い[1]。
Guttulinopsis と Rosculus を第9の科 Guttulinopsidae として加える説もあるが、これらをそもそもヘテロロボサとみなさない者も多い[1]。
系統
ここでは科分類を使わず、分子系統による7グループを示す[3][1]。
Pharyngomonadidae - Pharyngomonas。
Tetramitia
- A/VI - Fumarolamoeba、Paravahlkampfia、Euplaesiobystra、Heteramoeba、Vrihiamoeba、Stachyamoeba、Oramoeba、Pseudoharpagon、Sawyeria、Psalteriomonas、Monopylocystis、Harpagon
- B/I - Neovahlkampfia
- C/II - アクラシス Acrasis、Solumitrus、Allovahlkampfia
- D/III - Marinamoeba、Tulamoeba、Pleurostomum、Willaertia、ネグレリア Naegleria
- E/IV - Percolomonas、ステファノポゴン Stephanopogon
- F/V - Vahlkampfia、Tetramitus
incertae sedis - Pocheina、Learamoeba、Selenaion、Singhamoeba、Stygamoeba、Pernina(現在認められない属が記されているかもしれない)
- A/VI - Fumarolamoeba、Paravahlkampfia、Euplaesiobystra、Heteramoeba、Vrihiamoeba、Stachyamoeba、Oramoeba、Pseudoharpagon、Sawyeria、Psalteriomonas、Monopylocystis、Harpagon
盤状クリステ類 |
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分類史
ヘテロロボサは Page and Blanton (1985)
[4]
により、Acrasida と Schizopyrenida の2目を統合して作られた。
これはアメーバ型の綱として定義されたため、アメーバ期を持つ生物だけが含められていた。Cavalier-Smithはこれを拡張して、奇妙な鞭毛虫ステファノポゴンも含めた分類群を作った。彼はそれをペルコロゾア門 Percolozoa と名づけ、ヘテロロボサは Page and Blanton の定義どおり、すなわちペルコロゾアの中のアメーバ型のグループを表す名とした[5]。しかし、この意味でのヘテロロボサは多系統であり、他のほとんどの人は、ヘテロロボサの定義を修正してこのグループ全体の名とし、ペルコロゾアはヘテロロボサの新参同物異名とみなした[3]。
参考文献
- ^ abcdefgPánek, Tomáš; Čepička, Ivan (2012), “Diversity of Heterolobosea isbn=978-953-51-0064-5”, in Caliskan, Mahmut, Genetic Diversity in Microorganisms, http://cdn.intechopen.com/pdfs/28886/InTech-Diversity_of_heterolobosea.pdf
^ Adl, Sina M.; et al. (2012), “The Revised Classification of Eukaryotes”, J. Eukaryot. Microbiol. 59 (5): 429–493, http://www.paru.cas.cz/docs/documents/93-Adl-JEM-2012.pdf
- ^ abcdPánek, Tomáš; Silberman, Jeffrey D.; et al. (2012), “Diversity, Evolution and Molecular Systematics of the Psalteriomonadidae, the Main Lineage of Anaerobic/Microaerophilic Heteroloboseans (Excavata: Discoba)”, Protist 163 (6): 807–831, doi:10.1016/j.protis.2011.11.002, http://www3.botany.ubc.ca/bleander/images/heterolobosea.pdf
^
Page, F.C.; R.L. Blanton (1985年). “The Heterolobosea (Sarcodina: Rhizopoda), a new class uniting the Schizopyrenida and Acrasidae (Acrasida)”. Protistologica 21: 121-132.
^
Cavalier-Smith, T. (1991). “Cell diversification in heterotrophic flagellates”. In D.J. Patterson & J. Larsen. The Biology of Free-living Heterotrophic Flagellates. Oxford University Press. pp. pp. 113-131.